リフレーミングの成功体験

ここ二、三ヶ月の学びの中で「リフレーミング」の練習をしていますが、先日、とある席でその重要性を実感する成功体感がありました。今回の記事では、それについて共有したいと思います。

 

先月半ば頃、とあるイベントに登壇する機会があり、同じゲストの中に何度かお会いしたことのある(おそらくは私と同年代の)男性がいました。

事前の告知を通してその方の名前を見かけた段階で、私は「ああ、そうか……」と些かネガティヴな気持ちになったことを記憶しています。

というのも彼が、常に話題の中心にいたがり、口を開けば自慢話ばかりという、いわゆるビッグマウス型の人物だったからです。率直に言って、苦手なタイプだと思っていました。

 

さて、当日のイベントを無事こなした私たちは、主催者の提案で居酒屋に向かい、打ち上げを始めました。

その際、彼と私はほぼ対面に位置する席に座すことになり、そうなれば自然、なにくれとなく言葉を交わすわけです。

 

彼は相変わらず大きな声で(といっても私自身の声も相当に通りがよいのですが)自分の能力や人脈を誇示するような話をしています。

以前までの私であればそこで、適当に相槌を打つ、露骨に不味そうな顔で酒を飲む、ひっきりなしに煙草を吸う、などの行動を選択していたと思いますが、そのと気はイベントが成功したことで上機嫌だった、ということもあるのでしょう。たんとで練習している「リフレーミング」のことが頭をよぎりました。

 

「この人のことをおれは苦手だが、たかだか数時間の飲み会だし、せっかくだからマイナスをプラスに変換する練習相手になってもらうか」

 

とそこまで自分の心境を言語化できていたわけではありませんが、だいたいにおいてそんなような心持ちで彼との会話に注力したのです。

 

すると自分でもおどろいたのですが、そうして彼のよいところを見出そうとしていると、これまで瑕疵として認識していた部分が、むしろ彼という人間を構成する柄や模様であるというように見えてきました。

 

具体的には、常に話題の中心にいたがるという目立ちたがり屋的な部分は、率先して新しい話題を提供するエンターテイメント精神、且つリーダーシップの持ち主。

また自慢話ばかり、ビッグマウスという点についても、よくよく話を聞いていると、たしかに自画自賛は多いのですが、他人の評価を貶めることで相対的に自分の地位を上げる、といったことをしないのです。

むしろある程度の問題は個性として割り切る度量を持っており、自分だけでなく他人に対しても肯定感の強い、ポジティヴな人なのだな、と思えてきます。

 

そうしてしばらく彼と話しているうちに、いつしか苦手意識はほとんどなくなっていました。

それどころか彼に対する好感さえうっすらと抱くようになり、

「××さんのその考えはポジティヴでいいね」

「自分にそういう視点はなかったから見習いたいよ」

などと、これはまあ酒が入っていたからということもあるのですが、彼の人格を称える言葉が出てきました。

 

そうなると今度は彼のほうでも私の作品や考えを称賛してくれ、最終的にはおたがい(と思いたい)にとてもいい気持ちで帰路に着くことができました。

 

私はどちらかといえば、第一印象や生理に根差した感覚で人の好き嫌いを腑分けするきらいがあり、そうした自分の性質についてはもうずいぶん前から認識していたものの、特に改めることなく馬齢を重ねてきました。

 

要するに、気に入らない人間に無理に迎合することはない、白黒をはっきりつけることが自立なんだ、と考えていたのです。

しかし斯様なスタンスは言葉を換えれば、

「おれはこういう人間だ」

というどこかで聞いたことのある言い訳か開き直りに過ぎないのであって、他者とのすり合わせによって自己をアウフヘーベンしていく伸びしろを潰していたのではないかとも思います。

 

そうした自身の固着した世界認識(フレーム)を組み替えていくことを、現在、私たちはたんとで学んでいるわけですが、そこで身につけたことを実社会の中で積極的に実践し、成功体験を重ねていくことの重要さに、改めて気づかされました。

 

今後も引き続き、日々のいろいろな場面で「リフレーミング」を試していくつもりです。

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