「気付いて」「行動する」難しさを実感

DV加害者は自分の価値観が基準であり、正義であると意識的にも無意識的にも信じて生きていましたが、加害更生プログラムに参加して学ぶごとに、それが間違いであると気づきます。

 私がプログラムに参加して六ヶ月たち、自分の歪んだ価値観を自覚したことで、家族はもちろん他者に対しても公平な立場で接することを目標としていましたが、そんな簡単に自分は変えられないということを実感しています。

 

 DV加害者が更生しようとするときに、何を対象として目標にするか?それは加害行為をした親密な関係者(ここでは家族とします)が立ち直って、心から笑顔で過ごせるようになることではないでしょうか。

 なぜならば、自分の加害行為で家族を苦しませてしまったことを自覚し、自分の過ちを認め悔いているからです。そして家族はもちろん他者に対しても公平に接することができるように更生に向けて生きることが、家族の立ち直りにつながると信じて日々学んでいます。

 

 そこで私が直面している問題でもあり、皆様にも問いたいことは「他者にも同じ思いで接することはできるのか?」です。

 先にも述べた通り、加害を与えた人にはより良い関係を築くため十分注意しますが、道行く人、相性が悪い人、友人、知人、職場の関係…と「他者」は加害を与えた人よりも接する機会が多いと思います。

 他者とも公平な立場で接することができれば良いのですが、私は職場で相手を批判的に捉えてしまい、文句を言う、脅す、責める、批判する、ガミガミ言うことを度々使用してしまいます。

途中で「今自分は相手を批判している。止めないと。」と意識するのですが、止められなくなることがあり、気づいたのに止められなったことを後悔し、その都度プログラムで学んだことを思い出したり内容を見返したりしています。

そのようなことがあり、たまに会う子ども達とは良好な関係を築けているけど、もし日常的に接するようになるとまた不適切な対応をしてしまうのではないか?自分は更生に向かっていないのはないか?と不安になることがあります。

 

 しかし私たちが学んでいる内容に「加害者性を克服することは一生かかることだということを認めること」というものがあります。もし半年やそこらで更生できるならば、プログラムに参加するほど学びはしないし、そもそもDV・虐待行為をすることはしないでしょう。

 長年かけて使用してきた歪んだ価値観は無意識的にも使用してしまうので、簡単に克服できるものではありません。そして親密な関係であろうと、他者であろうと、被害を受けた側は何年も辛く苦しむことを認識して、更生しようとする強い意思を持つことが大切です。

 今の私は二歩進んでは一歩下がる状況で不安になることがありますが、どのような状況で特権意識や歪んだ価値観が首をもたげるのか見つめ直し、そこから一つずつでも更生に向けて進めることを信じるようにしています。

 

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